『オオタカ観察記』(氏原巨雄著/文一総合出版/2600円+税)

 日本画家であり、カモメ類などの研究でも名高い著者によるオオタカの繁殖についての観察記です。長時間の観察で描かれた精細でしかも暖かい筆致のスケッチを多数採録した感じのよい本で、写真とは違う雰囲気でオオタカの生活ぶりが表現されています。都市近郊の緑地での営巣なので、撮影者などの人間やカラスの影響にヤキモキする記述が多く見られ、現在のオオタカの置かれた環境が如実に表れているようでした。欧米では、こうしたスケッチによる生態図譜が数多く出版されていますが、日本ではほとんど見かけなかったので、これがよい前例となって、後に続く物が出てくればよいと願います。2005年から2007年まで繁殖した同一個体と思われる番の絵が3箇所に出てくるのですが、2番目だけ印刷の色味がずれているようで、せっかく比較が興味深い図なのに惜しいと思いました。

(2007/10)