『朽ち木にあつまる虫ハンドブック』(鈴木知之著/文一総合出版/1400円+税)
 立ち枯れや倒木の材、あるいはそこに発生しているキノコを餌にしている昆虫を集めたガイドブックです。丹沢の山小屋の薪でみつけたノコギリヒラタカメムシやオオヒラタハネカクシ、昔は身近で普通に見られたウバタマコメツキなどの写真に懐かしく見入りました。特に、ホソカタムシ、タマキノコムシ、ヒラタムシのような小型の甲虫類が充実していて、これらのグループの生態を、幼虫や蛹も含めてこれだけたくさん紹介した本は今までなかったのではないでしょうか。数多く学ぶことがあったのですが、中でもヒモミノガ(クヌギなどの幹から細い紐状の管を伸ばしているガの幼虫)について情報を得られたのは、観察会でよく質問される虫だけにありがたく思いました。コラムの一つに、「立ち枯れはゴミではありません」という項があり、公園のような緑地で枯れ木を片づけてしまうことに異論が唱えられています。これは大いに共感するところで、そのことが、多くの虫たちの写真とともに主張されていることが、大きな説得力を生んでいると思いました。(2009/5)