『海はゴミ箱じゃない』(眞淳平著/岩波ジュニア新書/780円+税)
 ちょうど1年前に小島あずさ氏との共著『海ゴミ』(中公新書)を紹介しましたが、それと同じように海岸のゴミ問題を中学生向けに解説した本です。西表島、知床、湘南など実際の海岸のようすの取材をふまえての記述は具体的で分かりやすく、海のゴミの実情と問題点を知るにはよい手引きとなっています。前著でも強調されていた国境を越えたゴミについても詳しく紹介されています。海ゴミの多くが川から来ることを確かめるために、荒川のさかのぼっていく章では、流域の各地で不当投棄されたゴミを見つけたことが報告されています。特に著者が強調しているのは、海岸のゴミを処理するための法的な体制が整っていないという点で、現在の法律の仕組みでは、集めたゴミは地元の自治体が処理費用を負担せざるをえず、そのことが問題解決の大きなネックになっているといいます。一つ気になった点は、「自然物のゴミ」という言葉が平気で使われていることでした。流木や海藻を片づけねばならない場合もあるでしょうから、ゴミを処理する立場にある人が、実務的な統計上そうした表現を使うのはやむを得ないと思いますが、子供たちに環境保全について伝える立場の人が使うべき言葉ではないのではないでしょうか。海や川からさまざまな動植物が流れ着くこともまた、浜辺の生態系の特徴なのですから。(2008/9)