『蝶の道』(南孝彦著/ソニーマガジンズ新書/780円+税)
 著者は、フリーのグラフィックデザイナーで、web上で「虫メガネ研究所」http://www32.ocn.ne.jp/~ecol/ というサイトを立ち上げ、身近な動植物の写真を定期的にアップするようになったことがきっかけで、地元の品川区でエコアップ活動に取り組むようになったといいます。その活動の現在の中心が2007年に始まった「蝶の道プロジェクト」で、小中学校などの拠点となる施設に蝶の食草園を作り、成虫が訪花できる路傍の花壇などでそれらを線で結んでいくような構想です。これは、著者達の自主的な取り組みを、区の環境課が支援する形で進められているといいます。最初の段階で取り上げられたのは、モンシロチョウ・モンキチョウ・ナミアゲハ・クロアゲハ・ヤマトシジミなどの10種類で、それらについて食草などを紹介したパンフレットを作ることから呼びかけを始めていったと言います。この本の中では、それぞれの植物の育て方や、チョウがやってきた時の対応の仕方などがきめ細かく紹介されています。チョウの幼虫と成虫の生活に必要な植物を意識的に整えることで、人も生きものも楽しめる環境を作り出すことが目標だといいます。運動を親しみやすいものとするために、食草も訪花植物も扱いやすい園芸種が多く取り上げられているのですが、そのあたりはもう少し在来種をいかした提案がされているとよいと思いました。『ペダリスト宣言』でも感じたことですが、地域社会の中で支持を受け、多くの共感者を得るには、肩肘のはらない柔らかい語り口が不可欠なことを改めて感じました。(2008/7)