『生き物と共存する公園づくりガイドブック』(神保賢一路著/文一総合出版/1800円+税)
   長年にわたって横浜市の公園管理の現場で仕事をされてきた著者が、その経験に基づいて、生物と共生する公園づくりの秘訣をまとめた本です。都市の公園や緑地が、開発の波を逃れ生き残った生き物の最後のオアシスだという認識から、まず草地、林、園路、水辺、空という5つの環境に分けて、公園で見られる身近な動植物が多くの写真を使って紹介されています。どの写真も、著者の勤務地で撮影されたとのことで、そこにも長期にわたる蓄積の重みが感じられます。後半を占める「生きもののいる都市公園を作るために」の章では、どんな管理をすれば、それらの生きものが暮らせる条件を整えることができるかが、具体的に示されています。特に強調されているのは、草刈りや剪定のような手入れの、季節的なタイミングです。雑木林の下草刈りはキジやコジュケイが巣立った後の7月にするとか、9月末に草原の秋の草刈りをすると、草がもう一度開花して実をつける余地があり、冬鳥の餌が供給されるなど、具体的な指摘は説得力があります。そうしたきめの細かい生きものへの配慮を、愛情といった抽象的な言葉ではなく、自然観察を記録したフィールドノートから得た知恵として示している点に、この本の特徴があると言えるでしょう。帯には、公園管理ボランティアのすすめという言葉も刷り込まれ、管理への参加も呼びかけられています。公園の自然のあり方をめぐっては、いろいろな考え方の対立も起こりがちです。そうした場合の合意の取り方など、著者の経験から書いて欲しかったことは他にもいろいろありそうだとも感じたことでした。(2008/3)