『まるごと日本の生きもの』(学研/木村義志ほか監修/2000円+税)
 動植物全体を1冊のハンディーな図鑑の中にまとめるというのは、一家に1冊の常備を目指す、いわば究極の図鑑つくりといった感じがします。その困難な作業に挑戦した図鑑で、新書より一回り大きい判形260ページの中に1000種類が納められています。全体は、まち・田・畑・草原・雑木林・山・川・海辺の8つの環境にまとめられており、種の選択としては、第一印象としては出るべき種は網羅されている感じを受けました。外来種とか栽培種にも目配りがされており、実用的でもあると評価できます。ところで、同じねらいの図鑑としては2001年に講談社から『日本の生きもの図鑑』が刊行され、現在も刷りを重ねています。この2冊を並べてみると、よく似ている点が多いのに気づきます。判形、環境別の構成、各環境の最初に見開きで景観と代表的な種を示したこと、各ページ3~4種の紹介、英名を入れたこと(英名は両書を見比べるとだいぶ違っていて、それもまた面白いのですが・・)、ページの上下に漫画風のイラストを配置して親しみやすさを演出しているところなど、まるでそっくりで、率直なところ、こういうのはパクリというのではないかと思いました。後発の学研版の方が種数が多く、またイラストのクォリティーが高いとは思いますが、何か釈然としない気持ちが残りました。ところで、講談社版には出ていないツマグロヒョウモンが、学研版には取り上げられていて、この種の分布域拡大を改めて感じたりしました。(2010/3)