『たんぼのおばけタニシ』(大木淳一著/そうえん社/1300円+税)
 著者は千葉県立中央博物館の地質担当学芸員ですが、生物に関心が深く、また写真の腕も確かなようで、写真絵本を手がけています。タゴガエルを扱った前著『幻のカエル』(新日本出版社)もこの通信で紹介しました。今回の本は、関東以西の水田での野生化が問題となっているスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)について扱ったものです。著者が農作業を手伝っているという義父一家での体験に基づいて、その蔓延ぶりが紹介されています。田んぼに点々と貝が見られるのもさることながら、なにより目立つのはその卵塊で、ショッキングピンクをしたそれが用水路の側壁など至る所に産み付けられている様には驚かされます。著者の義父が語り手として登場しますが、その九十九里弁の語り口がユーモラスです。特に著者の印象に強く残ったのは、幼い息子がスクミリンゴガイの卵を何の違和感もなく遊び相手にしている光景を見た時だったと言います。外来種が、生態系を変質させるというだけでなく、人の心と結びついた風景をも変えてしまう点に大きな問題があると感じたとのことです。(2010/1)