『今絶滅の恐れがある水辺の生き物たち』(内山りゅう編/山と渓谷社/2400円+税)

 内山氏は水生生物を専門とする写真家ですが、本書はタガメ・ゲンゴロウ・マルタニシ・トノサマガエル・ニホンイシガメ・メダカの6種の動物を取り上げ、多くの生態写真でその生活ぶりと、危機にある現状を紹介したものです。各種についての解説は、それぞれの生態についての専門家が執筆した充実した内容で、写真家と生物学者の見るべきコラボレーションになっています。また、タガメの雌による卵破壊について、コラムとして生態学的な解説が加えられていたり、トノサマガエルの項では近縁のダルマガエルについても情報が紹介されているなど、きめの細かい編集がされている点も好感が持てました。水辺の生き物の危機を語るには、少なくとも1,2種は植物を取り上げる必要があったのではないかと思いましたが・・。6種の解説を読んで、改めて感じるのは、日本の水生生物の生存について、水田の果たしてきた役割が極めて大きいということです。今春、茅ヶ崎市でタゲリ米の活動をしている三翠会では、国の補助金を得て、水路と水田の間の生き物の行き来を可能にする魚道を作りました。そうした地道な努力が各地で行われることの重要性をこの本は雄弁に語っていると思いました。(2007/10)