『割り箸はもったいない?』(田中淳夫著/ちくま新書/680円+税)

 先に亡くなられた金田平先生(日本自然保護協会顧問)のお別れ会が2007年9月2日に開かれたのですが、挨拶に立たれた何人かの方が、先生の実践の一つとして箸の持ち歩きにふれておられました。折から、割り箸問題についてのルポルタージュが刊行されたので目を通してみました。著者は、林業や森林をおもなテーマにしているジャーナリストとのことで、割り箸を使うなと言う主張が、その生産現場や林業の現状から考えて、妥当ではないということを、さまざまな数字やルポを通してまとめています。著者が、主張していることは、割り箸がもともとは奈良県の吉野で建築材の端材の利用として開発されたもので資源の有効利用という趣旨があったこと、現在使われている割り箸の多くが中国産で、中国ではシラカバやポプラなどが原材料となっていて原生林の伐採といった問題を引き起こしているわけではないことなどです。また、特に日本の林業に関して、林産製品の多面的な開発をしていかないと、ますます立ちゆかない状況に追い込まれていて、むしろ割り箸の使用を奨励することこそ、日本の人工林を守ることになるという主張をしています。著者の言うように、割り箸を使わないと言うアピールは、使い捨て批判という非常に分かりやすい主張であるが故に表面的に受け入れられやすく、そのことが実証的な裏付けの努力を怠る原因になってきたのは確かでしょう。しかし、この本では、割り箸賛成の立場ありきの単純化もあり、割り箸反対の立場からの実証的な本も欲しいと感じました。(2007/10)