『スナップ写真のルールとマナー』(日本写真家協会編/朝日新書/720円+税)

 博物館では、この10月に公募写真展を開催していますが、その審査員をお願いした写真家の方が、最近は肖像権の問題を気にして人物を撮る人が少なくなり、風景や自然に向かう人ばかりで、写真としてはつまらなくなったと話されていました。その話をお聞きした直後に『スナップ写真のルールとマナー』(日本写真家協会編/朝日新書/720円+税)という本を見つけたので、さっそく読んでみました。全体がQ&A形式で、具体的な事例がたくさん挙げられており、読みやすい内容でした。肖像権という概念は漠然とは理解していたつもりですが、その内容にプライベートの保護という面と、俳優のように顔写真が商業価値を持つ人のパブリシティー権という中身の違う二つの面があることを改めて認識しました。ホームページなどによるネット上の公開は、出版物以上に慎重にすべきだという指摘も重要だと思いました。肖像権に関して、この本では撮影時に発表についても了解を得ることが基本とされていますが、誰が見ても気持ちのよい写真なら、たとえ了解を得ていなくても問題になることはないといった性善説的な記述も目立っていました。自分の権利に異様に固執する人がいることを考えると、その点は楽観論にすぎるのではないかとも感じたことでした。また、著作権のことにも丁寧にふれられていて、出版する権利などの著作財産権と、氏名表示をするかしないかを決める権利・写真の内容を変えられない権利などの著作者人格権という二面があり、後者は他人に譲渡できないものなのだそうです。博物館の写真展の場合、現在は入選作の著作権を館に頂くような規定になっているのですが、このままでは法的には無理があるようで、見直していかねばならないことに気づかされました。(2007/10)