『カラー版徹底図解 昆虫の世界』(岡島秀治監修/新星出版社/1500円+税)
 装丁の雰囲気からも出版社からも、いわゆる実用書の範疇に入る軽い本かと思って読み始めたのですが、意外なほど充実した内容で、昆虫の形態・分類・行動・生態についての入門的教科書として非常によくできている本だと感心しました。見開き2ページが1テーマになっており、左ページにテキスト、右ページに解説を補足するイラストと写真が示されています。テーマの設定も分かりやすく、たとえば「身を守るための戦略」という第4章では、毒と警戒色、擬態、カムフラージュ、目玉模様、擬死、化学兵器、幼虫の巣、蛹と繭、周期ゼミがテーマとされていて、これを見ただけで広範囲にわたる視点で本作りがされていることが分かると思います。また、イラストの質が高く、いろいろな器官の形態とか、世代交代のある種の生活環など、分かりやすい図が数多く収録されています。写真としては、外国産の種も多く登場します。最終ページでファーブルが取り上げられている点も気に入りましたが、その貢献がもっと強調されているとよかったと思いました。(2009/8)