『鳥の骨探』(松岡廣繁ほか著/NTS/2800円+税)
 書名からは、簡単な入門書のように感じられる方がいるかもしれませんが、鳥類の骨格についてのおそらく日本で初めての本格的な図譜で、「ダチョウ・ペンギン・アホウドリ・ツル・タカ・ペリカンからフクロウ・カッコウ・カワセミ・スズメに至る日本産および外国産主要鳥類の全身骨格標本と頭骨・胸骨・翼の骨・足の骨等の分解骨カラー写真からみる骨格バードウォッチング」というはなはだ長い副題にあるように、さまざまな分類群の鳥類の骨格が紹介されています。全部で54科の骨格が扱われているので、体型的に特徴のあるほとんどのグループは網羅されており、食痕の分析、遺跡の出土物あるいは漂着物として、鳥の骨に興味のある人にとっては必見の文献と言えるでしょう。また、鳥の形態に関心を持つ人にも一読をお勧めします。それぞれの種について、全身骨格の写真とともに、頭骨・胸骨・骨盤・大腿骨など主要な骨について2方向あるいは3方向から写した写真が収録されており、骨の同定の正確な情報源となる作りがされています。骨というのは、その立体的な構造を頭に入れるのがなかなか難しいのですが、調べる時の大きな手がかりを得たことは嬉しいことでした。一部の標本については、全身骨格を分解して個別の骨の撮影をされたようで、大変な努力の結果できあがった本と言えるでしょう。ページをめくっていくと、鳥類の骨は飛ぶことと関連して収斂が著しく、全体的には似たものが多いことに気づきますが、頭骨だけでなく胸骨などにも意外なほどの多様性があることも知ることができました。ヨタカは、口を開けて飛び回りながら虫を捕らえることはよく知られていますが、口の中に虫が衝突した時の衝撃を回避するために上顎の内側の骨が特に丈夫になっているのだそうです。そうした新しい知識もいくつか得ることができました。(2009/7)