『かながわの自然観察おもしろ絵日記』(佐藤恭子著/神奈川新聞社/1000円+税)
 自然観察指導員神奈川県連絡会の会報に、佐藤恭子さんが長年にわたって連載されてきた自然観察絵日記が、1冊の本としてまとめられました。刊行前のチェックの役目をさせて頂いたので、いわば内々の紹介ということになりますが、身近な動植物のさまざまな事象について、スケッチを中心とした文字通り絵日記風の楽しい観察記です。前半は、季節を追った日付順の構成になっており、冬越しのロゼット・ツバキとヒヨドリ・ヒキガエルなどいろいろな生きものが登場します。最後の3分の1には、ミニ図鑑として、カエル・セミ・ドングリ・冬芽などいくつかのグループについて見分け方や観察のヒントがまとめられています。ほとんどの内容は、横浜の市街地で気づいたものとのことで、著者が後書きに書いているように、遠くへ行かなくても、特別な知識がなくても、特殊な道具を使わなくても自然観察が楽しめることが伝わるとよいと思います。この本の最大の特徴は、根気よく丁寧
に描かれたスケッチにあります。写真は特別な関心がなくても写りますし、その中に本人が理解していない現象もちゃんと写し込まれているのは普通のことです。しかし、スケッチは目をつけた点しか描けませんし、本人の理解の程度がそのまま画面に現れるものでしょう。その意味で、採録された100ページをこえるスケッチには、著者のなみなみならぬ自然への関心と、理解が反映されているものだと思います。洒落や言葉遊びもたくさん使われているのですが、それを見ながら、くすりと笑ったり、その通りと相づちを打つのは、相当のベテランかもしれません。その意味で、この本は一見、やさしい入門書のようで、実は自然とのつきあいの深さをはかる物差しになるような気がします。(2009/1)