『鳥の形態図鑑』(赤勘兵衛著/偕成社/5800円+税)
 雑誌BIRDERに「バードトラッキング」として10年以上にわたって連載された赤氏による精密イラストが単行本となったものです。このイラストは、獣医のもとに保護された個体、もしくは事故死した個体を描いている点に特徴があり、写真や普通の図鑑でのイラストでははっきりしない、鳥の体の各部分の細部について知ることができます。カイツブリの脚がどんな構造になっているかとか、カワウの下嘴がどうなっているかとか、風切羽の欠刻のようすとか、ずいぶん参考になりました。ヒバリの長い後ろ指の爪がまっすぐになっていることとか、タゲリの指に皮膚が少し張り出した小さな膜があるとかは、この本で初めて知ったことでした。登場するのは51種類で、著者の地元である埼玉県で普通に見られる種が中心となっています。それぞれの種については、巻末に岩井修一氏による解説がついていますが、この解説がなかなか詳しくて一読の価値があります。特に、鷹狩りのような民俗的な情報や、語源に関連した古典などが詳しく紹介されています。一つ、気になったのは、キジバトの項にある「捕食者に似ることによって身を守る擬態はベイツ型擬態と呼ばれる」という一文で、似たような表現がツツドリやアオバズクの項にも見られるのですが、これはベイツ型擬態の範疇に入るとしても、定義としては適切ではないでしょう。(2008/12)