『基本がわかる野鳥eco図鑑』(安西英明著/東洋館出版社/1900円+税)
 日本野鳥の会事務局の中心的な存在の一人で、サンクチュアリなどの仕事を手がけてきた著者による、野鳥観察の入門書です。図鑑という名がつき、谷口高司氏によるイラストも多数収録されてはいますが、第1章の「見てくらべる図鑑」で、代表的な日本の野鳥が、生息環境や地域別に紹介されているほかは、全体的に読む本の体裁となっています。第2章以降は観察のノウハウの紹介が中心で、第2章「読んで知る図鑑」では、観察の道具や、識別、声の聞き分け、巣箱や餌台などについて、第3章の「鳥の神秘や不思議」では鳥の渡りや体の仕組みについて、第4章「楽しみ方のさまざま」では季節ごとの身近な鳥の観察ポイントについてのチェックリストが示されているほか、昆虫や植物の観察についても言及されています。また終章「鳥と人とエコライフ」では、生物多様性の保全や持続可能性、それに関わるエコライフについて概要が示されています。野鳥観察の入門書はいろいろ出されていますが、内容的な幅の広さでは他に例をみないもので、特に探鳥会のリーダーを務めているような人は一読の必要があるでしょう。全体に文章がやや堅苦しい感じがあり、「日々瞬間がサバイバルで生存率が低い野生のあり様」というような表現はもう少しスマートに言えるのではないかと感じました。ところどころに、少々独断的に思える記述もあり、「種は定義の問題であって存在があるわけではない」と言うのは言い過ぎでしょうし、英名や和名を「俗称」というのもいかがなものかと思いました。「カラスはのどに餌を蓄える」「クリは風媒花」も妥当な表現とは言えないでしょう。(2008/12)