『決定版日本の外来生物』(自然環境研究センター編/平凡社/3400円+税)
 代表的な外来の動植物約140種を取り上げた写真図鑑で、「外来生物法」で特定種や要注意種に指定された種がすべて網羅されています。指定された種の中には、他国での侵入状況から予防的な観点で指定された種が含まれており、そうした種については手頃な図鑑がなかったので、その点で大変役に立つ内容となっています。個人的には、カラドジョウなど、報告書上での名前しか知らなかった種の特徴が理解できたのが勉強になりました。各種類についての記載も、形態的な特徴だけでなく、影響と対策という項目が設けられ、渡来の経緯や在来種との関係などについても詳しくふれられています。参考文献も非常に充実しています。また、外来種をめぐるさまざまな話題が、コラムとして紹介されており、オーストラリアでは、コイが侵略的な外来種として駆除の対象となっているというコラムなどを興味深く読みました。入手したら、まずコラムだけを通読するのもよいでしょう。なお、種の選定については、外来生物法を中心においたためか、アオマツムシ・アメリカシロヒトリ・ドバト・サカマキガイのような代表的な外来種が項目として取り上げられておらず、決定版と銘打つにはこれでよかったのかと疑問を感じました。コウラナメクジ類とかオオミスジコウガイビルなどについても、身近で話題になることが多いだけに、情報がほしいところでした。また、在来種との見分け方も今ひとつ説明不足を感じました。(2008/11)