『淡水産エビ・カニハンドブック』(山崎浩二著/文一総合出版/1200円+税)
 川の観察会でよく登場するのに、十分な説明ができないでいた生きものの一つがエビの仲間でした。このハンドブックでは、ヌマエビ科14種、テナガエビ科15種、カニ類6種、アメリカザリガニ科4種が紹介され、身近な種類について充実した情報が得られたのは嬉しいことでした。近年は、南方系の種の記録が増える傾向もあり、しっかり知識を身につけたいと思いました。カラー写真による図鑑は、見ているだけで楽しいという利点はあるのですが、種の同定の手引きとしては、今ひとつ区別点が分かりにくいという問題があります。このハンドブックでも識別のポイントとなる形態についての部分図が欲しいところでした。また、術語の説明も不十分で、各論編の最初に出てくる単語である「眼上棘」がどの部分なのかどこにも説明がないなど、もう少し行き届いた編集が欲しかったところです。ところで、文一総合出版からは、ハンドブックというシリーズの小型図鑑が続々と刊行されています。最近出たものでは『野鳥の羽ハンドブック』『紅葉ハンドブック』などは、いわば入門的な役目でしょうが、この本などは今まで一般向きの図鑑で扱われることの少なかった隙間的な分類群で、それを埋めてくれることにもこのシリーズの大きな意義があると感じました。(2008/11)