『リンネと博物学(増補改訂)』(千葉県立中央博物館編/文一総合出版/15000円+税)

 千葉県立中央博物館では、リンネの著作や書簡などからなるレンスコークコレクションを購入した記念に1994年に特別展を開催したのですが、そのおりの図録が増補改訂されて一般書として刊行されました。リンネは学名の二名法を確立したこと、動植物に鉱物を加えた自然物全体の分類体系化をはかったことで知られ、近代博物学の出発点となった研究者として評価されていることは言うまでもありません。本書では、リンネの著作を通して、その考え方や業績を細かく紹介するとともに、その背景となった18世紀という時代の博物学の様相についても詳しく取り上げられています。リンネの仕事が、多くの動植物、さらには鉱物にも及ぶ幅広いものであり、さらには現代の生態学につながるような仕事もなしていたことにまず驚かされました。購入された書籍からの図版も多数収録されていて、精緻な彩色銅版画を味わうことができます。リンネはあまりにも有名な存在ですが、一人ですべてを考え出したわけではなく、先行した研究者のアイデアを巧みに利用しながら、体系化を図ったこともよく理解することができました。なお、こうした内容の本では、書誌的な資料としての役割が求められると思いますが、同じ本について『植物種誌』『植物の種』という二つの表記が混在しているのは主著だけに落ち着かない気分でした。同じように『学問のたのしみ』『学問の魅力』の併用も気になりました。(2008/7)