『三浦半島のおさかな雑学』(神奈川県横須賀三浦地域県政総合センター・神奈川県水産技術センタ
ー編/東宣出版/1000円+税)

 神奈川県水産技術センターで発行しているメールマガジンの記事をもとにして編集されたという本で、三浦半島周辺の水族の話題66編が収録されています。常に漁業者と密接なつながりを持ちながら水産研究の仕事をされている方々が書かれているものなので、魚の分類や生態だけでなく、資源量の推移、養殖技術の開発、伝統漁法から調理法まで広く話題が取り上げられていて楽しく読み進むことができます。「地魚の消費・食育」という項では、近年衰えていると言われる魚食の普及につながる話題が取り上げられ、松輪サバのような新たなブランド魚やオキエソの薩摩揚げのような新加工品が登場します。「育てる漁業」の項目では、卵を人工ふ化させて稚魚を放流するという取り組みが、ヒラメ・マダイ・トラフグなどいろいろな種について試みられていることが紹介されています。また、アマモ場の再生のような海底環境の改善も重要な課題であることが強調されています。資源量の推定のためには、漁獲された魚の測定が重要な情報源となりますが、魚市場では魚を弱らせる余計な作業は嫌われることが多いそうで、そうした仕事が継続的に続けられている神奈川県の水産技術者と漁業者の信頼関係には見るべきものがあると言えるでしょう。行政の仕事が入手しやすい本の形で提供されることも、意外に珍しいことで、こうした情報発信を今後も期待したいと思います。なお、メールマガジンについては、 http://www.agri.pref.kanagawa.jp/suisoken/top.asp に購読の案内があり、バックナンバーを見ることもできます。(2008/6)