『標本の作り方 自然を記録に残そう』(大阪市立自然史博物館編著/東海大学出版会/2500円+税)

    日本の自然史系博物館のリーダー的存在である大阪市立自然史博物館の学芸員が中心となって、それぞれの専門とする地質や生物の標本の作り方をまとめたものです。化石・鉱物・植物・昆虫のように一般的な標本から、レプリカ・種子・コケやキノコ・剥製・骨格標本・卵・羽毛・足形など特殊なものまで、広範囲な情報が取り上げられています。制作のノウハウが、イラストもまじえて具体的に記述されているので、博物館で仕事をする立場としては参考になる点が多くありました。しかし、一般的には本全体を通読するというよりは、その一部の情報が必要な場合がほとんどでしょうから、インターネットで公開されることが、より実用的なのかもしれません。本にしたメリットとして、総論的な部分に注目しましたが、そこでは標本を残す意義、データの必要性、採集のマナーなどが丁寧に説かれています。少々物足りなく感じたのは、標本にともなってどんなデータをラベルとして残すべきかについてでした。各項目で、なるべく多くのデータを残すようにと書かれてはいるのですが、具体性に乏しいと感じました。それぞれの筆者が、理想と考える具体的なラベルの実例を示してくれるとよかったのではないでしょうか。環境の分類方法とか、位置情報の記述の仕方などについて知りたいと思いました。(2008/4)