『フィールドガイド日本の野鳥』(高野伸二著/(財)日本野鳥の会/3400円+税)

『A Photographic Guide to the Birds of Japan and North-east Asia』(榛葉忠雄著/Christopher Helm/Amazonで5000円程度)

 野外で使う野鳥図鑑として多くの人に愛用されてきたものが大幅に増補改訂されました。高野氏の絵は、見た目の印象が非常によくとらえられている点に定評があるところで、羽を1枚1枚描くような精密画がかえってその種類らしさを失ってしまうことがあるのとは対照的ですが、その図版が原著のままにいかされて改訂されたことは大変嬉しいことでした。増補改訂されたのは、近年国内で新たに記録された約70種が谷口高司氏のイラストで加えられたこと、最新の知見をいかして分布図に部分的な修正が加えられたこと、観察の手引きが若干加えられたことです。

 時を同じくして、欧米のバードウォッチャーを対象とした英文の図鑑が刊行されました。こちらは極東を対象にした図鑑なので、ヒゲガラやダルマエナガの生態写真が見られたり、ライチョウ類・フクロウ類などで日本には分布しない種も紹介されているのでなかなか楽しく見ていくことができます。ムシクイ類、センニュウ類などの種類が多く出ているので、珍しい種類を探したい人には必携の図鑑と言えるでしょう。まえがきの部分には、日本列島の自然環境の特徴や自然保護の課題などが要領よくまとめられていますが、生物地理学的な視点の記述がないのがちょっと物足りない点でした。また参考文献が出ていないのも気になった点です。分布図ということでは、この図鑑と、高野図鑑を並べて見ていくと、あちこちに違いが見つかり、興味深いものがあります。(2008/2)