『草原の科学への招待』(中村徹編/筑波大学出版会/1600円+税)

 筑波大学で開設されている総合科目「草原」の教科書としてまとめられたという本で、草原の生態学の基礎が気候的成立条件・植生・水分収支・物質循環・土壌・生産性などの面から詳しく解説されています。森林国である日本では、草原は特殊な環境ととらえがちですが、地球規模でみると地表面の3分の1を占める代表的な環境で、その重要性に注目しておく必要があるでしょう。モンゴルをはじめとするユーラシアのステップについての共同研究の成果に基づいた著作とのことで、最新の研究成果が生かされた内容になっています。それだけに難解な部分もあり、特に図表のほとんどが専門論文からの引用なので、その意味が理解できているか心許なく読み進みました。地球温暖化によって、荒原からさらに砂漠化が進んだり、また一方で森林への遷移が進んでいる地域もあって草原環境も大きな影響を受けているそうです。また、日本の草原については、氷河期の冷涼な気候下で現在よりも広い面積を占めていた草原的な環境が、火山の周辺や、さらには人間による放牧や草地利用という影響下で残存したと性 以下文字化け判読できず。(2008/2)