『シダハンドブック』(北川淑子・林将之著/文一総合出版/1200円+税)

『写真でわかるシダ図鑑』(池畑怜伸著/とんぼ出版/2800円+税)

 シダはなかなか見分け方が頭に入らないと嘆いておられる方も多いことでしょう。実際、スタンダードな図鑑である平凡社の『日本のシダ植物』でシダの名前を調べようとしても、掲載種が全国にわたっていて多すぎる、生態写真だけでは特徴が分かりにくい、解説は術語がネックになるなどの問題があって、まず結論に到達するのは困難だと思われます。シダに詳しくなるには、まず身近な普通種についてしっかり認識することが早道だろうと思われますが、今回刊行されたのは、そのための手引きとして役立ちそうです。本州の平地から丘陵地で多く見られる80種ほどの種を丁寧に解説した内容で、葉をスキャンした図版も鮮明で好ましく、なにより図の中に直接特徴が書きこまれているのが、初心者には親切です。80種という種数は決して多いわけではないでしょうが、普通に山野を歩いていて見かけるシダの個体数からいえば、優に9割以上を網羅していると思えますから、これらをしっかり覚えることは入門としては十分なことでしょう。

 次の勉強に進む手がかりとしては、『写真でわかるシダ図鑑』をあげておきます。こちらで扱われているのは約300種で、本州産の種はほぼ網羅されています。著者は、退職後シダの観察の道に入られたということで、十数年の経験を元にして初心者への手ほどきに徹した本を作られたものです。この本でも写真に直接特徴が書き込まれていて、近縁種の区別点も非常に理解しやすくなっています。私には、シダ識別のツボが十分押さえられているかを論評するほど知識がないのですが、分類上の位置にこだわらず似た種同士が同じページの紹介されているとか、同じ種が複数回登場するなど、初心者への配慮が十分されていることが感じられました。「葉質は湿っぽい」のような独特のくせのある言葉使い、いくつかの校正ミスが気にはなりました。(2007/11)