『驚異!透明標本いきもの図鑑』(岩見哲夫ほか著/宝島社/1200円+税)
 透明標本とは、おもに魚の骨格の研究のために使われている手法で、タンパク質分解酵素とグリセリンを利用して筋肉を透明にし、色素で骨の部分を染めて観察するものです。硬骨組織はアリザリンレッドによって赤く、軟骨組織はアルシャンブルーによって青く染まるので、写真にとると見た目としては赤と青からなるレントゲン写真のようなもので、繊細な美しさと神秘さを兼ね備えています。骨がついた状態のままで標本にできるので、連結の状態などを観察するのに適しており、また幼魚の軟骨も観察できるので、魚類形態学に大きく貢献したということです。手法としては、歴史のあるもので、私も新米学芸員時代にアユの透明標本を作ったことがあるのですが、1冊の図鑑として紹介されたのは初めて目にしました。この本は、専門家の指導をえながら編集スタッフがさまざまな種類の標本を作って本にしたということらしく、遊び心をもってページが作られています。主役はもちろん魚類で、日本産の淡水魚、海水魚のほか、熱帯魚も含めた約80種が取り上げられています。生活環境別に構成されているのですが、形態の違いを説明していくには分類順にした方がよかったように思いました。特に軟骨魚類の標本写真はもっと見せて欲しいところでした。おまけとしてさまざまな生物について、この手法を試すということも行われていて、セミの抜け殻がうまくいったとして紹介されています。(2010/1)