『これからの日本の森林づくり』(四手井綱英・四手井淑子他著/ナカニシヤ出版/1700円+税)
 先月下旬の新聞で、日本の森林生態学の基礎を築かれた四手井綱英先生の訃報が報じられました。私は、たった一度だけ京都府で開かれた自然観察指導員講習会でお目にかかったことがあり、カリスマ的な風貌ととつとつとした語り口の説得力が印象に残っています。本書は、その先生の遺作というべき本で、おもに過去20年間に書かれた文章を収録し、それに弟子にあたる数人の研究者が所論を書き添えて編集されたものです。タイトルから想像されるような、提言的な内容というよりは、日本の森林の成り立ちやその性質について、平易に書かれたものが主になっています。冒頭に、「もり」と「はやし」の違いが取り上げられていて、人によって作られ管理されているのが「はやし」であると述べられています。その通りだと思うのですが、以降の章で、雑木林は「もり」として扱われていて、その整理でよいのか、少々疑問も感じました。四手井先生は、「里山」という言葉の提唱者としても知られていますが、その先生が薪山と炭山の違いを意識していかねばならないと指摘されていたことを初めて知り、薪炭林とひとまとめに理解していたのでは実態がつかめないのだと反省しました。(2009/12)