『日本の家畜・家禽』(秋篠宮文仁・小宮輝之著/学習研究社/3000円+税)
 フィールドベスト図鑑というシリーズの1冊として刊行された、飼育動物についてのハンディー図鑑です。ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ・ヒツジ・ウサギ、ニワトリ、その他という構成で分かるように、ペットというよりは実用目的で飼育されている動物について、その起源、育成の歴史、品種などについて紹介したものです。内容は多岐にわたっており、たとえばウマの項目では、日本各地に引き継がれている在来馬、競走馬、ポニー、馬車を曳く馬、ウマの祖先などについて、それぞれ多数の写真を使って詳述されています。図版も優れていて、ウマの代表的な品種を1枚の図の中に示して大きさを比較するなど、理解を助ける工夫が随所に見られます。ウシでは、役牛では上半身、乳牛では下半身が発達した体型になり、肉牛では長方形の体型になるなど、実際に家畜を見た時の目の付け所も示されているのが親切に感じました。それぞれの動物について日本で育成された伝統的な品種の系統保存が、各地で取り組まれていることもよく分かりました。動物園も、そうした仕事に一役買い始めているようです。また、関連した話題もよく拾われていて、ヤギの項目では小笠原諸島で野生化したものが植生を劣化させていることにもふれられています。卵が白いのは、白色レグホンという特定の品種の特徴であるとか、手品師が使うはとはドバトではなくてジュズカケバト系のものであるとか、雑学的にも興味深い話題を見つけることができました。(2009/10)