『ホントに歩く大山街道』(中平龍二郎著/風人社/1900円+税)

 大山は、山岳信仰のメッカとして今でも多くの参拝客を集めていますが、この本は東京の赤坂から山麓にいたる大山街道を辿って歩くための、詳細をきわめたガイドブックです。最後は山頂までの登山道についても紹介されています。大山は毎日見ている山でもあって関心があるので、伊勢佐木町の有隣堂の2階売り場の推薦図書として平積みになっているのを見つけ、さっそく買い求めました。全コースについて、1万分の1地形図に道筋と目印になる交差点、建物や石造物などが示され、おもな目印についての500枚以上の小さな写真が掲載されている念のいれようです。レストランやコンビニの店名なども具体的に出ていて、盛衰の早い現代では数年もするとかえってそのことが混乱のもとになるのではと心配になりました。それぞれの地域の集落の歴史や社寺の由来、名所旧跡などについても丁寧に紹介されており、すこぶる情報量の多い本だと言えます。こうした古くからの街道は、道の形状は変わってもルートは引き継がれていそうなものですが、港北ニュータウンのような大規模な宅地開発で、まったく失われてしまった場所もあるということです。そうした開発が、地形を変えただけでなく、歴史までも葬ってしまったことを改めて感じました。(2007/11)